クロメート処理を施した金属部品に色ムラが生じてしまう。
●部品の素材は亜鉛。表面処理として有色クロメート処理※が施されている。
●不良品は有色クロメート特有の虹色の風合いが一様ではなく、局所的に液しみの様な色ムラが生じている。
●不良品の発生率はロットによって大きく異なっている。
●感覚的にはクロメート液が古いほど不良品発生率が高くなっていて、不良品発生が増加したらクロメート液を交換している。
※クロメート処理:亜鉛などの金属表面にクロムの被膜を作ることで耐食性を向上させる処理。有色・光沢・緑色・黒色等の種類があり、用途により使い分けられている。
有色クロメート処理の特徴でもある虹色の色彩は、クロメート皮膜の厚みのわずかな違いにより生じています。色ムラの色彩や発生位置などから、色ムラ部分はクロメート皮膜が周辺より厚くなっていると予想し、部品の表面分析を行うこととしました。
さらに古いクロメート液の方が不良品発生率が高くなるとの情報からクロメート液に原因があると考え、新旧のクロメート液の性状分析を行うこととしました。
元素の分布が分かる元素マッピングという手法を用いて部品表面を分析したところ、色ムラのある部分にはクロムが多く分布しており、クロメート皮膜が厚くなっていることが分かりました。
新旧のクロメート液に組成の違いは見られませんでしたが、不良品発生率の高い古いクロメート液の方が粘度が高いことが分かりました。
これらの分析結果を踏まえて、追跡調査としてクロメート液の粘度と不良品発生率の関係を調べたところ、両者に関連があることが確認でき、色ムラ発生メカニズムを解明するとともに、粘度による液管理方法を提案することができました。
<色ムラ発生の予想メカニズム>
1.クロメート液の粘度が高くなる。
2.液切れが悪くなり、液残存部は局所的にクロメート処理が進んでいる状態となる。
3.局所的にクロメート皮膜が厚くなってしまい色ムラが発生する。
メッキ液組成分析(六価クロム・三化クロム等) 比重 粘度 表面張力 走査電子顕微鏡(元素マッピング) 他