同じ素材のステンレスを使っているのに製品によって耐食性が違う。なぜなのか理由が知りたい。
●同じステンレス素材をもとに製品を作っているのに製品によって耐食性が違う。
●今後の技術開発に活かしたいので耐食性が違う理由を知りたい。
ステンレスは鉄にクロムやニッケルなどを混ぜた合金です。鉄よりもずっと耐食性が高く錆びにくいです。耐食性の違いはステンレスの状態の違いと考え、耐食性の異なる製品間でステンレスの状態を比較してみることにしました。
ステンレスにもいくつかの種類があり、数%の配合の差で耐食性が大きく変わることが知られています。そこでステンレスの元素組成を比較をするために蛍光X線分析※1を行いました。
ステンレスは表面に酸化被膜というものができており、これがさらなる酸化を防いでくれているため錆びにくいとされています。そこで酸化被膜を比較するためにグロー放電発光分析※2とX線回折分析※3を行いました。
※1 蛍光X線分析:X線を照射して元素組成(種類や量)を調べる分析
※2 グロー放電発光分析:放電により表面元素を調べる分析。表面から深さ方向の元素分析が可能。
※3 X線回折分析:X線を照射して結晶構造を調べる分析
元素組成と酸化被膜の厚さ・組成に大きな違いはありませんでした。しかし、X線回折の結果から耐食性の高いステンレスのは結晶が細かくなっていることが予想されました。
そこで製品表面の結晶構造を顕微鏡で観察したところ、予想は当たり、耐食性の高いステンレスは結晶が細かいことが確認できました。ステンレスは結晶が細かいほど耐食性が高いといわれており、結晶の大きさの違いが耐食性の違いであることが判明しました。
金属の結晶は加工や熱処理により大きさが変わることがあります。製造元では今回の分析結果を受けて製造工程の見直しを進めていただいているところです。
蛍光X線分析 グロー放電発光分析 X線回折分析 金属組織観察