漆器

これは漆器の断面です。左側の孔がたくさんある部分は木材(ヒノキ)、右側の滑らかな部分は漆塗膜です。

木材をミクロの目でみると、孔がたくさんある「多孔質材料」と言えます(以前紹介した珪藻土と同様です)。木材は多孔質であることで軽量性、調湿性、吸音性といった優れた特性を備えています。一方で孔から水がしみ込んでしまうため、多孔質であることは濡れやすい環境ではデメリットにもなってしまいます。

それを克服したのが漆器です。漆はウルシ科の植物の樹液が固化した天然樹脂で、その性質や構造はプラスチックに近いものです。固化した漆は水を通しませんので、木材の上に漆を塗ることで防水性が格段に良くなります。さらに固化した漆(漆塗膜)は耐久性にも優れていますので、漆器は食器等の日用品から文化的な工芸品まで幅広く使われています。

 

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漆塗膜をさらに拡大すると丸い凹凸が見つかることがあります。この凹凸はウルシの樹液(生漆)に含まれる粒子によりできたものであり、天然のウルシを使っていることの証拠ともいえます。

この粒子は固体ではなく、水を主成分とした液体です。ウルシ樹液の主成分はウルシオールという油であり、油中に水粒子が分散しているW/O型エマルションと呼ばれる状態になっています。ちなみに牛乳やマヨネーズの様に水中に油粒子が分散しているタイプをO/W型エマルションといいます。

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