植物の葉の秘密・第3弾はハスの葉についてです。
水辺を彩るハス(蓮)とスイレン(睡蓮)。どちらも水面に浮かぶ丸い葉を持ち、初夏に花を咲かせるため、しばしば混同されることもあるようです。よく似ている両者ですが、水が触れたときの反応は全く違います。
ハスの葉の上の水は丸い水滴となっています。一方でスイレンの葉の上の水は薄く広がっています。葉に対する水の角度(接触角)が大きくなる性質は撥水性、角度が小さくなる性質は親水性と呼ばれます。
ハスの葉は撥水性があるため泥水がかかっても汚れることはありません。こうした性質は"ロータス効果(ハス効果)"とも呼ばれています。
ロータス効果の秘密を電子顕微鏡で見てみましょう。
ハスとスイレンの葉の表側(水上側)を拡大したものです。ハスの葉には微細な突起(乳頭状突起)がありますが、スイレンの葉は表面が滑らかです。なおスイレンの葉上に点在する丸いものは気孔です。
ハスの葉の突起をさらに拡大すると粉の様なものに覆われているのが見えます。この粉の様なものはワックス(ロウ)分の結晶です。
ハスの葉を有機溶剤で洗うとワックス分の結晶が無くなり、気孔が見えるようになります。
一方のハスの葉の裏側(水中側)には突起はありませんが、ワックス分の結晶は確認することができます。
葉の表面のワックス分だけでも撥水性を得ることができるため、ハスの葉は表側も裏側も水を弾きます。さらにハスの葉の表側にある無数の突起は水との接触面積を小さくし、撥水性を高める作用があると考えられています。
ロータス効果はワックス分の化学的性質と無数の突起という表面構造の複合作用により生み出されているようです。