この2枚の画像はどちらも板状の結晶が密集しています。ある食品の表面を拡大してみたものです。。
ある食品とは「干し芋」と「干し柿」です。上の画像では上段が干し芋、下段が干し柿です。どちらも板状の結晶ですが、よく見ると大きさや角度などに違いが見られます。
干し芋や干し柿といった乾燥食品・ドライフードの中には表面に白い粉が付いているものがあります。この粉は実は糖類の結晶です。サツマイモや柿に含まれていた水分がなくなると同時に、溶けていた糖類が表面に析出し結晶化したのです。
どちらも甘くておいしい干し芋と干し柿ですが、その甘さを引き出しているメカニズムはそれぞれ異なっています。
干し芋の原料であるサツマイモはもともとは甘くありません。サツマイモにはデンプンとβ-アミラーゼという酵素が含まれており、β-アミラーゼが活性化されることでデンプンが麦芽糖に分解されます(糖化)。サツマイモを貯蔵や加熱するとβ-アミラーゼが活性化し、糖化が進みます。干し芋や焼き芋の甘さはこのメカニズムにより引き出されているのです。
一方の干し柿の原料は渋柿です。サツマイモと違い柿には甘柿・渋柿どちらにも元から糖類が多く含まれています。しかし渋柿にはタンニンという渋み成分も多く含まれているため、そのままでは渋くてとても食べられません。タンニンはアセトアルデヒドという物質と反応して渋みを感じないようになる(不溶化)と言われています。柿は干されることで内部でアセトアルデヒドが生成すると言われています。干したりアルコールに漬けたりしてタンニンを不溶化させることで、柿本来の甘さが引き出されているのです。
干し芋と干し柿は、長い伝統の中で保存食としてだけでなく、おいしさも追求した食品と言えます。