以前、「日本の国菌」として二ホンコウジカビをご紹介しましたが、今回は「日本の国石」をご紹介します。
国石(こくせき)とはその国を代表する石のことで、世界各国を挙げてみるとアメリカはサファイア、イギリスやオランダはダイヤモンド、オーストラリアやハンガリーはオパールといった宝石が制定されています。
日本の国石を電子顕微鏡で観察したのが次の画像です。微細な結晶が集まっています。これは一体どんな石でしょうか?
日本の国石は「ひすい(ひすい輝石およびひすい輝石岩)」です。2016年に日本鉱物科学会により認定されました。ひすいはひすい輝石の集合体です。硬さ(硬度)としては石英に劣りますが、多結晶であることから割れづらく、割れづらさ(靭性)はダイヤモンドに優ります。
なおひすいと呼ばれる石にはいくつか種類があり、代表的なのは硬玉(ジェダイト jadeite)と軟玉(ネフライト nephrite)ですが、国石であるひすいは硬玉の方で本翡翠ともいいます。
軟玉を電子顕微鏡で観察したのが下の画像です。こちらも微細な結晶が集まったものですが、ひすい(硬玉)よりも繊維状をしています。軟玉の結晶のひとつひとつは透閃石-緑閃石という鉱物です(透閃石-緑閃石はアスベストにもなる鉱物です)。
さて国石ひすいを拾うことができる場所があります。それは富山県の宮崎・境海岸から新潟県の糸魚川海岸にかけての通称"ヒスイ海岸"と呼ばれるところです。
ひすいが産出する理由として、この地域はフォッサマグナの西辺、糸魚川静岡構造線上に位置しており、地中深くのひすいが上がりやすかったためといわれています。
ひすいの見分け方として次のようなポイントがあるそうです。
・色は白から緑(まれに青や紫など)
・他の石より硬いため角ばっている。
・硬いためカッターの刃が立たない。
・光にあてるとキラキラ輝く。
・他の石よりやや重い。
これらのポイントを頭に入れてヒスイ海岸で石をいくつか拾ってきました。素人ではひすいを見分けるのは難しいといいますが、はたしてこの中に本物のひすいはあるでしょうか?
分析機関らしく蛍光X線分析などの分析手法を使って科学的に同定してみました。その結果は・・・
① 石英 、 ② 貝殻(炭酸カルシウム) 、
③ ロディン石 、 ④ 軟玉 、 ⑤ ロディン石、
⑥ 曹長石 、 ⑦ ひすい(硬玉) 、 ⑧ 石英(碧玉)
分析装置を駆使した結果、⑦をひすいと判別できました。
③と⑤のロディン石は見た目がひすいにとてもよく似ていて騙されやすいことから"キツネ石"とも呼ばれていますが、カルシウムが多いことから蛍光X線分析という元素組成を調べる手法により明確に識別することができます。
⑦ひすい(NaAlSi2O6)と⑥曹長石(NaAlSi3O8)の元素組成はよく似ており、成分分析だけでは識別しづらいのですが、X線回折分析という結晶構造を調べる手法によって識別することができます。